投稿日2026/10/03
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製造業のAXとは?レガシーシステムを残したまま進める業務改革とシステム開発の進め方
「古い生産管理システムを使い続けているが、刷新には億単位の費用がかかると言われた」「AIを使いたいが、うちの工場はまだ紙とFAXが中心」。製造業では、こうした悩みを抱えたまま足踏みしている企業が少なくありません。結論から言えば、基幹システムを入れ替えなくても、周辺の業務からAXは始められます。
この記事では、製造業でシステム刷新が進みにくい理由と、レガシーシステムを残したままAIとシステム開発で業務を変えていく手順を解説します。最初に取り組むと効果が出やすい業務も、表で紹介します。
製造業のAXとは
この記事でいう「レガシーな製造業」とは、古い仕組みが業務の土台になっている状態を指します。たとえば、20年以上前に導入したオフコンや自社製の生産管理システムです。担当者ごとに分かれたExcel、紙の作業日報、FAXで届く注文書なども含みます。どれも長年の運用で磨かれてきたもので、すぐに捨てられるものではありません。
AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIを前提に業務や組織のあり方を変えていく取り組みです。DXは「業務をデジタルに置き換えること」に重心があります。一方でAXは、「AIが仕事の一部を担う前提で、仕事の流れを組み直すこと」に重心があります。AXの全体像は「AXとは?DXとの違い・日本の最新動向と進め方」で解説しています。
製造業のAXで大切なのは、基幹システムの刷新を前提にしないことです。生成AIは、紙やFAX、Excelのような「整っていないデータ」もある程度読み取れます。そのため、古い仕組みを残したまま、周辺の業務から変えていけます。
例:FAXで届く注文書をAIが読み取り、受注データの形に整えてから既存の生産管理システムに取り込む。基幹システム側には手を入れない。
製造業でシステム刷新が進みにくい3つの理由
製造業の多くは、古い仕組みに課題を感じながらも刷新に踏み切れていません。2020年版ものづくり白書(経済産業省ほか)では、製造業の約9割がレガシーシステムを抱えているとされています。ここでは、刷新が進みにくい理由を3つに整理します。
1. 基幹システムがブラックボックスになっている
長く使われてきたシステムほど、改修を重ねて仕様が複雑になっています。開発した担当者や外部の技術者が退職し、中身を説明できる人がいないケースも少なくありません。経済産業省のレガシーシステムモダン化委員会総括レポート(2025年)も、仕様のブラックボックス化を壁の一つに挙げています。同レポートは、現行の仕組みをそのまま再現したがる「現行踏襲へのこだわり」も指摘しています。
例:原価計算のロジックがプログラムの中にしか残っておらず、誰も計算式を説明できない。
2. 熟練者の暗黙知と紙の運用に支えられている
製造現場の判断は、熟練者の経験に頼る部分が多くあります。段取りの順番、不良が出やすい条件、急ぎの注文の割り込ませ方などは、システムではなく人の頭の中にあります。2026年版ものづくり白書には、労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査(2026年)が掲載されています。技能継承が「うまくいっている」「ややうまくいっている」と答えた企業は、**合わせて33.3%**でした。
例:作業日報は紙で、月末に班長が手作業でExcelに集計している。
3. 一括刷新は高額で、工場を止められない
基幹システムを丸ごと入れ替えるには、まとまった費用と長い期間がかかります。さらに、切り替えの際にトラブルが起きれば生産が止まります。止められない工場ほど、「今のまま動いているなら触らない」という判断になりがちです。
例:月末の締め処理が止まると出荷と請求が遅れるため、移行のタイミングを決められない。
「一括刷新」と「周辺から変える」の違い
レガシーシステムへの向き合い方は、大きく2つに分かれます。基幹システムを一度に入れ替える「一括刷新」と、基幹はそのままに周辺業務から変える「段階的な改善」です。どちらが正しいかではなく、自社の状況に合うかどうかで選びます。
| 比較項目 | 一括刷新 | 周辺から変える(段階的) |
|---|---|---|
| 費用 | まとめて大きく投資する | テーマごとに小さく分けて投資できる |
| 期間 | 年単位になりやすい | 1テーマずつ短い期間で効果を確かめられる |
| 生産への影響 | 切り替え時に停止のリスクがある | 基幹に触れないため影響が小さい |
| 現場の負担 | 操作が一度に大きく変わる | 慣れた仕組みを残しながら変えられる |
| 向くケース | 保守切れが迫っている、全社で業務を標準化したい | まず効果を見たい、予算や人手が限られている |
前述の総括レポートでも、オフコンの業務を段階的に廃止し、クラウドサービスへ順次移行する進め方が例として示されています。また中小企業については、競争力に関わらない領域はパッケージやSaaSに寄せることを原則としています。自社の強みが詰まった部分だけを作り込むという考え方です。
例:受発注と在庫はSaaSに寄せ、独自の段取りノウハウが詰まった工程管理だけを自社向けに作る。
レガシーを残したままAXを進める手順
周辺から変える場合の進め方を、5つのステップで紹介します。
STEP 1:業務を棚卸しする
最初に、手作業が多い業務と、そこにかかっている時間を書き出します。「誰が・何を見て・どこに転記しているか」まで追うと、改善の候補が見えてきます。
例:受注担当がFAXを見ながら、生産管理システムに品番と数量を手入力している。1日あたりの件数と所要時間を記録する。
STEP 2:データの出入口を作る
古いシステムでも、CSVの出力や帳票の印刷はできることが多くあります。この出入口を使えば、基幹システムを改修せずにデータを取り出せます。紙やFAXは、OCRやAIで読み取ってデータに変えます。
例:生産管理システムから毎朝CSVを出力し、進捗の一覧として共有フォルダに置く。
STEP 3:周辺業務をAIとツールで置き換える
出入口ができたら、転記や集計、問い合わせ対応などの周辺業務をAIやワークフローツールに任せます。人は最後の確認と判断に集中します。
例:FAXの注文書をAIが読み取って受注データの案を作り、担当者は画面で内容を確かめて承認するだけにする。
STEP 4:動くモックで現場に確かめる
製造業のシステム化では、仕様書だけで現場と合意するのは難しいものです。現場の担当者は、実際の画面を触って初めて「この項目が足りない」と気づくことが多いからです。そこで本開発の前に動くモックを作り、現場に使ってもらいます。進め方は「モック先行開発とは」で詳しく解説しています。
例:タブレットで入力する作業日報のモックを、ライン1本で1週間試してもらう。
STEP 5:基幹刷新の要否を判断する
周辺の改善を重ねると、データの流れと業務の実態が見えてきます。そのうえで、基幹システムを刷新すべきか、今のまま使い続けるかを判断します。最初に結論を出すより、根拠を持って決められます。
例:周辺業務を整えた結果、基幹に残る機能が少なくなり、SaaSへの置き換えが現実的になった。
製造業で効果が出やすい業務
最初のテーマは、手作業が多く、うまくいかなくても生産に影響が出にくい業務から選ぶのがおすすめです。製造業でよく候補になる業務を表にまとめました。
| 業務 | よくある現状 | AI・システム化の例 | 取りかかりやすさ |
|---|---|---|---|
| 受注入力 | FAXやメールの注文書を手入力 | AIで読み取り、受注データの案を作る | 高い |
| 作業日報 | 紙に記入し、月末にExcelで集計 | タブレット入力と自動集計 | 高い |
| 進捗・在庫の共有 | 電話や現場確認で把握 | 基幹のCSVから一覧を自動で作る | 高い |
| 見積作成 | 過去の見積をExcelから探して作る | 類似案件をAIが探し、たたき台を作る | 中程度 |
| 技能継承 | 熟練者から口頭で教わる | 作業動画と手順書をAIで整理し、質問に答える | 中程度 |
同白書に掲載された三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査(2026年)では、製造業の経営課題で「労働人口の減少」が69.8%と最多でした。人手不足に直結する転記や集計の業務から始めると、効果を実感しやすくなります。
例:作業日報をデジタル化して集計作業をなくし、班長が現場の指導に時間を使えるようにする。
axflow の製造業向け支援
axflow は、AIを活用した開発手法「AI駆動開発」でシステムを開発しています。初回のヒアリング後、最短1〜2週間で動くモックを無料で作り、モックで仕様を確定してから本開発に進みます。基幹システムには触れず、周辺の1業務から始められます。
製造業の場合は、たとえば次のような流れです。まずヒアリングで、受注入力や作業日報など手作業の多い業務を1つ選びます。次に、実際の帳票やCSVのサンプルをもとにモックを作り、現場の担当者に触ってもらいます。仕様が固まったら本開発に進み、既存システムとの連携は n8n や納品型RPAの FlowCraft で組みます。
図面や原価のように社外に出しにくい情報は、ローカルLLMを使って社内環境で処理する構成も選べます。全社のAXをどう進めるか相談したい場合は、AXコンサルティングとして業務の棚卸しから伴走します。
例:「FAX受注の入力をなくしたい」という相談から始め、2週間後に読み取り画面のモックを現場と一緒に確認する。
まとめ
- 製造業のAXは、基幹システムの刷新を前提にせず、周辺業務から始められる
- 刷新が進まない背景には、ブラックボックス化、熟練者の暗黙知、止められない工場がある
- 「出入口を作る→周辺を置き換える→モックで確かめる」の順で進めるとリスクが小さい
- 最初のテーマは、受注入力や作業日報など手作業が多く生産に影響しにくい業務がよい
- 基幹刷新の判断は、周辺の改善で業務とデータの実態が見えてからでも遅くない
参考資料
- 2026年版ものづくり白書(経済産業省・厚生労働省・文部科学省)
- DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて:レガシーシステムモダン化委員会総括レポート(経済産業省、2025年)
- 2020年版ものづくり白書(経済産業省・厚生労働省・文部科学省)
よくある質問
古い基幹システムを使い続けても大丈夫ですか?
すぐに問題が起きるとは限りませんが、保守部品やサポートの終了、技術者の退職には注意が必要です。まずは保守期限と、中身を説明できる人がいるかを確認しましょう。期限に余裕があれば、周辺業務から改善しながら刷新の時期を見極める進め方が現実的です。
現場の年配の社員でも使えますか?
画面の項目を最小限にし、紙の帳票と同じ並びにするなどの工夫で、使い始めの負担は小さくできます。そのためにも、本開発の前に動くモックを現場で試してもらうことが大切です。使う人の声を反映してから作り込むと、定着しやすくなります。
図面や原価などの機密情報をAIに渡しても大丈夫ですか?
外部のAIサービスに入力する場合は、データの扱いを利用規約で確かめ、社内ルールを決める必要があります。社外に出したくない情報は、社内環境で動くローカルLLMで処理する方法もあります。どの情報をどこで処理するかを、最初に整理しておくと安心です。
システム開発、まずは「動くモック」を見てから決めませんか?
axflowのAI駆動開発なら、最短1〜2週間で実際に操作できるモックを無料で作成。
仕様を確定してから本開発に進むので、速く・安く・認識のズレなく形にできます。
執筆者
株式会社property technologies - CTO(最高技術責任者)
前職では、クライアントのWEBサイトシステムの開発、社内のIT開発を経験した後、同社CTOに就任。マーケティングプラットフォーム開発に成功。
フリーランスに転じて企業のITコンサルティング、システム開発の請負等を行った後、2021年5月よりproperty technologiesグループ参画。
CTOとしてエンジニアを統括し、プラットフォーム開発や社内システム開発に従事。
ITコンサルティングおよびシステム開発の請負や、プラットフォーム開発や社内システムの設計・構築まで幅広く手がける。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」への出演をはじめ、メディアにも出演。
前職では、クライアントのWEBサイトシステムの開発、社内のIT開発を経験した後、同社CTOに就任。マーケティングプラットフォーム開発に成功。
フリーランスに転じて企業のITコンサルティング、システム開発の請負等を行った後、2021年5月よりproperty technologiesグループ参画。
CTOとしてエンジニアを統括し、プラットフォーム開発や社内システム開発に従事。
ITコンサルティングおよびシステム開発の請負や、プラットフォーム開発や社内システムの設計・構築まで幅広く手がける。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」への出演をはじめ、メディアにも出演。
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